テニスコーチに読んで欲しい新書!平井伯昌氏の見抜く力
公開日:2008年12月27日 | 最終更新日:2008年12月27日
カテゴリー:異業種から学ぶ | Tags: コーチ, 平井伯昌
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年末の忙しさは、尋常ではなく、クライアントから他のクライアントへの移動距離がとにかく長い!昨日も結局は、4 時間以上も移動・・・文庫や新書を数冊読了してしまう時間でした・・・
そして、昨日の移動時間内に読了した中に、平井伯昌[1]著「見抜く力」(幻冬舎新書:2008年11月)
があります。最初はちょっとした「何といってもあの北島康介選手を育て上げたコーチの著者」といった興味本位で、何となく購入しましたが、どんどん内容に惹かれていきました・・・単なるコーチ論ではなく、スポーツクラブに関する運営にも役立つようなヒントが隠されている!
バスケットボールやバレーボール、野球にサッカー・・・そうしたチーム競技の監督が書いた書籍は多いのですが、個人競技に携わるコーチの書籍としては異色ではないでしょうか。水泳のように個人競技のコーチ、しかも東京スウィミングクラブというスポーツクラブに所属するコーチが書いた書籍ということも手伝って、あらゆるテニスコーチにとって、メッセージがあると信じます!
水泳という競技は、チームスポーツではないが、一緒にトレーニングしている仲間をはじめ、コーチやトレーナーがどんな人間なのか、お互いに認めあったり努力しあったりする関係が大切である。そこでいい関係を保っていける選手のほうが、強くなれるし、伸びる芽があるのだ。一人だけで伸びていける選手なんか、どこにもいない。(中略)伸びる選手とは、周りが伸ばそうとしてくれる選手でもある。(p.71 - 72)
上記の前文として、「自分のことばかりはなす選手は伸びない」と断言していて、上記の文章が続きます。どうでしょう?我々テニス関係の人間に最も不足しているところをえぐられているような気がしませんか?こうしたドキッとするような記述が満載です。
(北島康介選手に)変に注目を浴びてほしくなかった。チヤホヤする外野が増えると、かえって面倒なことになる。そこで、試合前の練習を厳しくした。(中略)いつもより負担をかけて疲れさせる作戦を実行した。調子をわざと落とさせたおかげで、試合では中学記録にも及ばず負けてしまった。(中略)正直に言えば、「負けてよかった」と思う。ストレートにオリンピックをめざさなければいけない時期だった。中学記録程度で浮かれている暇はなかった。四年間弱という短期間でオリンピックを担う選手をつくることが先決で、寄り道している場合ではなかったのだ。(p.74 -75)
これ・・・凄い!直近の大会での勝利を一喜一憂するどころか、きちっと将来を見つめ、その目標達成のために何が必要なのかを明確に持っている!中学生の時から、オリンピックという大舞台での泳ぎを目指して、何が必要で、何が邪魔であるかを見据えて戦っている・・・いったい日本のテニスコーチで、どれ位のコーチが「この選手をどうやってグランドスラムで優勝させようか」と真剣に考えているのでしょうか!?考えているとしたら、「勝つためには何が必要か」と計画しているのでしょうか・・・
平井氏は、若い時に、海外の選手の活躍や海外における先進の練習方法を目の当たりにして、「日本からでは勝てない」と打ちのめされる時期があったそうです。しかし、「日本人としてのプライド」をもって、そうした海外の方法を日本に持ち帰り、日本人流にアレンジして日本人選手に応用する・・・これこそ、我ら日本人のやり方である、と最終章で語っています。もうこうなると、単なるコーチ論ではなく、テニス業界そのものを見直せ、と言われているような感覚です。
そして「おわりに」として、以下のような記述があります。
最近になって、コーチにしてもいわゆる「サラリーマン化」しているように思えてならない。水泳にのめりこんで楽しんでいるのではなく、あくまでもコーチを「仕事」の一環として割り切り、黙々とノルマをこなしているように見える。(中略)本当それでいいのだろうか?(p.169 - 170)
どうもサラリーマンを「悪」と仮定しているような表現にはちょっと批判的な私ですが、それでも上記の記述には説得力があります。黙々とノルマをこなす・・・そんなコーチに決して魅力は感じませんから!
本書は、本当に今の日本のテニス界をひっくり返すためのヒントが満載です。また、スポーツクラブを支えるべき「親」が、コーチにどういう風に映っているのかも記述されています。
テニスにも、こうした気流がふくことを心から願っています。
注:1
平井伯昌(ヒライノリマサ)
1963 年、東京都生まれ。82 年、早稲田大学社会科学部へ入学。在学中に選手からマネージャーへ転向。卒業後、東京スイミングセンターに入社。96 年から北島康介選手の指導に当たる。2004 年、アテネオリンピックで北島選手に金メダルをもたらし、「金メダリストを育てる」という自身の夢をも叶える。08年、北京オリンピックの水泳日本代表コーチに就任。北島選手にオリンピック二大会連続の二種目金メダルを、中村礼子選手に二大会連続の銅メダルをもたらす。現在、東京スイミングセンターコーチの他、日本水泳連盟・競泳委員。一二年のロンドンオリンピックに向け、競泳日本代表のヘッドコーチに就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
